「笑って暮らすも一生、泣いて暮らすも一生」
— ドイツの格言 —
何をあげても、文句ばかり言う。いくら優しく接しても、嘆いてばかり。どんなことをしてあげても、感謝どころか不平不満が返ってくる。
もし、あなたに、そんな友人がいたとしたら、たとえどんなに良い人だとしても、いつかは何もあげたいとは思わなくなるし、助けてあげる気もなくなってきますよね。
逆に、いつも笑顔で話してくれたり、ちょっとした贈り物でも喜んで、ありがとうと言ってくれるような友人ならどうでしょうか?きっと、その人のためなら、いくらでもお手伝いしてあげたいし、何でもあげたくなってくるでしょう。
そう……
いつもあなたの側にいる人だって、同じことを思っているはずですよ。
哲学者のカントは、生まれつき、とても身体が弱く、長くは生きられないだろうと、言われていたそうです。
胸が異常に薄く、うまく呼吸ができないため、いつも「苦しい、苦しい」と、口ぐせのように言い続けていました。
しかも、カントの家は貧しく、医者にかかることもできません。愛する母親を、早くして亡くしてからは、ますます自分の身の不幸を嘆く毎日です。
『ああ、苦しい』
『どうして、私だけがこんな目に遭わなければならないんだ……』
17歳のとき、何とか医者に診てもらうことができましたが、そこでカントは、こんなことを言われます。
「君の病気は、今の医学ではどうすることもできない。これからも身体は、良くなっていくことは難しいだろう。もちろん、君も苦しいだろうが、苦しんでいる君を見ているお父さんは、もっと苦しいのではないかな。幸いなことに、君は、とても強い心を持っている。そんな強い心を与えられたことを喜んでみてはどうだろう。これからは、まわりの人たちに悲しい思いをさせないために、『苦しい』などとは言わずに、感謝の気持ちを持って生きてみないか」
カントは、医者のことばで、今まで、まったく感謝や喜びを感じていなかった自分に気づきました。 父親は、貧しいながらも、精一杯の愛情を注いでくれています。また、近所の人たちや学校の仲間だって、病弱な自分を助けてくれていたのです。それなのに、自分は、いつも「苦しい、苦しい」と嘆いてばかりだったのです。
カントは、深く反省して、もう二度と「苦しい」とか「辛い」とは、口にしないでおこうと決めました。そして、できるだけ、心を明るく持ち、前向きのことばを話すようにし、いつも喜びと感謝の気持ちを持とうと努力していったのです。
すると、気持ちが楽になったばかりではなく、いつしか身体の不調を感じることも少なくなってきたのです。強い心を与えられたことに感謝し、これを社会に活かすために、人一倍、勉学に励みました。そして、哲学者として、世界中に影響を与える大きな仕事を成し遂げたことは、ご存じの通りです。カントは、当時としてもかなり長命にあたる、80歳まで生きることになります。
喜びや感謝の気持ちを持っていると、まわりにいる人は、あなたをサポートしやすくなるようです。いつも、あなたの側にいる人。家族や友人も、もちろんそうですが、あなたのまわりのこの世界だってそうですよね。
笑って暮らすも一生、泣いて暮らすも一生。
いつも幸福でいる秘訣は、きっとこれなのでしょうね。